■汚屋敷の跡取り-【解説】1.生成(2015年09月06日UP)
目次ページの説明でも書きましたが、繰り返します。
ゆうちゃんの暴言と差別発言が目に余りますが、差別を助長する意図はありません。
どういう経緯で、そういう思考に至ったのか。
どう変わってゆくのか。
変化を読む話です。
これを真に受けてゆうちゃん思想に染まる人がいるとも思えませんが、念の為。
幼い頃のゆうちゃんは、DVとネグレクト、過干渉の被害者です。
ゆうちゃんは、条件付きの優遇と、本人の望まない方向性の愛情を過剰に注がれて育ちました。
祖父は「優一は本家の跡取りだから偉い子だ」
父親は「優一は長男だから賢治より偉い子だ」
ゆうちゃんはこれによって、跡継ぎにされない長男以外の男性と全ての女性を、無条件で見下すようになりました。
優遇は「跡継ぎであること」が条件なので、ゆうちゃんに万一のことがあれば、その優遇はケンちゃんが受けることになります。
祖父と父にとって、「山端家の跡継ぎ」は、自分の血を引く男子でありさえすれば、別にゆうちゃんである必要はないのです。
また、祖父と父は、幼いゆうちゃんの世話を実母と祖母に丸投げして、実質、育てていません。
実母と祖母へのDVを見せつけ、暴力で人を支配することを肯定し、価値観と認識を歪ませただけです。
このことで、ゆうちゃんは、自分の痛みには人一倍敏感ですが、人の痛みにはまったく共感できないヒトになりました。
実母が行方不明になった同情で、祖母からは過剰に構われました。
それは、プレゼントの玩具に代表されるように、本人の意思や望みを無視した一方的なものでした。
本当の意味では大切にされず、家庭内で日常的に他の家族がDVに曝されるところを見て、「人を道具扱いすること」を当然として育ちました。
「誰かを大切にする/人として意思を尊重する/存在そのものを肯定する」と言うことを知らないまま、年齢だけを重ねました。
狭いコミュニティの中で、能力などとは無関係に褒めそやされ、肥大したゆうちゃんの自意識は、自分より優れた者の存在を認識できなくなっていました。
実母の存在が無視されるようで、ゆうちゃんにとって、七歳しか違わない後妻を受け入れ難かったことは、想像に難くありません。
父を始め、他の家族は、ゆうちゃんの気持ちを考えもしません。
ヨメ不在で、家事労働などの人手が足りず、不便だから、ゆうちゃんの実母の失踪宣告後、すぐに新しいヨメを家に入れました。
ゆうちゃんは、大学受験で初めて挫折を味わいました。
その原因を、自分の能力不足ではなく、他者に求めました。
後妻が子を生んだから、弟妹の夜泣きがうるさかったから、祖父と父に農作業の手伝いをさせられたから、過疎地で塾や予備校がなかったから、内容の充実した参考書が手に入らなかったから……
挫折の原因となった新しい家族との交流を拒絶し、意思疎通を欠いたまま、敵認定します。
同時に、新しい家族を受け入れ、ゆうちゃんの気持ちを無視する元の家族も拒絶します。
祖母に対しては、身の回りの世話をさせる為の道具扱いが始まります。
ここから、ゆうちゃんもDVの加害者になったのですが、本人には自覚がありません。
また、大学受験失敗後、深夜アニメにハマり、オタク系の趣味にのめりこみますが、オタクにはなれませんでした。
ゆうちゃんは、子供の頃に満たされなかった「欲しい物を買ってもらう=家族に自分の気持ちを理解してもらう」欲求を、オタグッズを収集することで埋め合わせているだけです。
放映中のアニメのグッズや新発売のゲームソフトなどは、父のクレジットカードで、次々とネット通販しますが、キャラの名前もロクに覚えていません。
買い物依存症のゆうちゃんにとって、一瞬でも「欲しいと思った物」を「買う」ことが目的なので、買った後はどうでもよく、一部は「消費」して使い捨てていますが、大半は買ったままの状態で、ゴミに埋もれさせています。
ゲームも未開封で、全くプレイしていないものが山積みになっています。
国内最大のオタクの祭典も「あんな混雑の中に行きたくない」と、「心から、趣味と、同好の士との交流を楽しんでいる」真のオタクを、醒めた目で見ています。
ゆうちゃんに「買い物依存症」の病識がない為、自分を「オタク」だと思っているだけで、正確な自己認識はできていません。
本人は「オタク=消費系の趣味」のつもりですが、買い物依存症としての購入対象が「オタク趣味の品」であるだけです。購入対象にした作品にも、キャラクターにも、全く思い入れがありません。ゆうちゃんがオタクを自称したら、真のオタクの人に怒られそうです。
実母に暴力を振るう父を嫌っている為、「自分は、あんなクズにはならない」と言う根拠のない自信が、客観的な自己認識を妨げます。
祖父と父がしたような、身体的暴力を振るいさえしなければ、DVではない、と思っています。
祖母と継母、異母妹への暴言と差別発言による精神的DVに気付かないまま、十九年の歳月が過ぎました。