■黒い白百合 (くろいしらゆり)-31.捜索範囲(2016年06月19日UP)

 鴨川が、黒百合の位置と捜索範囲を記した地図をプリントした。嵐山課長が、捜査本部の会議を招集する。
 会議に集まった面々は、表情を険しくした。
 三千院が完結に術式の説明をし、嵐山課長が締めくくる。
 「術が完成してもたら、確実に六人は亡くなるんやそうです。早よ手ぇ打たなあかんのです」
 「犯人もわかりましたんか?」
 神楽岡(かぐらおか)が腰を浮かす。
 「犯人は、まだわかりません。せやけど、その呪具が埋めてあるとこは、全部やないんですけど、わかりました。今、専門家のセンセに鑑定書、書いてもぉてます」
 嵐山の説明に、神楽岡は座り直した。
 「ジュグて何です?」
 「術を行使する為に必要な道具です。今回は、呪文を刻んだ粘土板と、百合の球根などです」
 「粘土細工か。指紋が採れたらえぇねんけどな」
 三千院の説明に二本松が呟いた。
 橘警部が、配布資料を指さし確認する。
 「え〜……一、二、三……ほな、場所がわからんのは、六個の内の一カ所だけで、それも手掛かりは、見つかってんねやな?」
 嵐山課長が首肯する。
 「はい。その場所に張り込んだら、もしかしたら、犯人と接触できるかも知れませんけど、それは、ちょっと、待ってください」
 「モミジさん、なんでや? 逮捕のチャンスやないか」
 神楽岡の非難がましい質問に、嵐山課長は切々と言って聞かせるように答えた。
 「相手はホンマモンの魔法使いかもしれんのです。そうやのうても、魔術の知識と、魔法を実行できる呪具を調達できる人物です」
 それに河原(かわら)が頷いた。
 「そしたら、どんなモンで武装してるか、知れたもんやないなぁ……」
 「せやから、張り込む人に対魔法装備を持たしてからやないと、危ないんです」
 「なんやそれ? そんなえぇモン、魔道課さんは持ってはるんか?」
 魔道犯罪対策課の嵐山課長は、それにも頷いた。
 「相手の力がわからんので、どの程度防げるかわかりませんけど、一応、あるだけありますんで、ちょっとだけ、待ってください」

 魔道犯罪対策課は、生活安全課に協力を仰ぎ、捜査に出た。
 「新聞にも載って、黒い百合探すんが、(おも)とったより流行ってるみたいやし、近所の人に聞いたら、じっきわかるやろ」
 大原が軽く請け負った。
 地図と写真を手に、手分けして川端署管内のマンションを回る。
 程なく、他の捜査員から、三千院のケータイに連絡があった。
 「川端東マンションの住人に聞きましたらね、何や誰が植えたやらわからんし、真っ黒けやしで、気色悪い言うて、管理人のおばちゃんが、切ってもたそうなんですゎ。現物あらへんのですけど、宜しゅおすか?」
 「ありがとうございます。場所が分かれば大丈夫です。すぐ行きます」
 嵐山課長に連絡すると、課長は先に連絡を受け、既に現着していた。鴨川も向かっていると言う。

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