■黒い白百合 (くろいしらゆり)-26.不明六人(2016年06月19日UP)
「すんませんなぁ。ウチからも、悪いお知らせがありますんやゎ。昨日……九日にやね、またぞろ(またしても)、若い女の子の捜索願が出されましたんやゎ」
生活安全課の大原が、申し訳なさそうに後頭部を掻いた。
「氏名は
大原は時折、資料に目を落としながら報告した。
これで六人だ。
一同、資料を目で追いながら、大原の説明に耳を傾ける。
「最後に姿を見たんは、七日の晩。会社の上司。職場のみなさんで、お食事をして、方向が一緒の人を途中まで、車で送りはったそうなんです。四人乗せて、最後に普家さんを降ろしはったそうです」
「実家で親と同居やのに、どなして親の知らん間に、家へ荷物置いて消えてまうんや?」
「あぁ、それなぁ、お父さんは帝都へ出張、お母さんは、近所に住んではるお姑さんが、熱出して寝込みはったから、看病しに行ってやったんやそうです」
橘警部の質問に、大原がのんびりした声で答えた。
母親は、八日の昼前に帰宅。
午後、会社から、普家絵冬が出勤していない、と電話があった。
会社から本人の携帯電話へ、何度も掛けているが応答がない為、実家の固定電話に掛けたと言う。
母親が確認したところ、通勤鞄と携帯電話は、本人の部屋に置いたままだった。
その日は結局、出勤せず、夜になっても帰宅しなかった。
上司の話では、七日の夜、実家近くのコンビニ前で、普家を降ろしたと言う。
コンビニからの帰宅途中、何かあったのでは……と母親が九日朝、警察に届け出た。
「中身と身体が分けられて、ほぼ確実に術中やと思われるんは、
鴨川が状況を整理する。
今回の普家絵冬については、まだ不明だが、聞いた限りの状況は、よく似通っている。
同じ状況での行方不明者は六名。残る三人の行方は、全く手掛かりがない。
不可解な事件ではあるが、魔法使いや、魔法の道具のせいと決めつけるのは早計だ。
もし、魔道犯罪対策課の推測通り、失踪事件の第一発見者でもある捜査協力者が、一連の失踪事件の犯人に殺害されたのだとすれば、警察が批難の矢面に晒されることは必至。更に、国内の魔法使いや、魔法の研究施設、魔法の道具を扱う企業や商店なども、巻き添えで批難を向けられる恐れがある。
まだ、犯人像すら判然としない段階での報道発表は、見合わせることに決まった。
「普家さんの関係者に、もうちょっと聞いてみよか」
一課の橘が席を立った。
翌朝、一課が改めて聞きこみに出た。