■黒い白百合 (くろいしらゆり)-30.黒い百合(2016年06月19日UP)

 「黒い白百合の根元に呪具(じゅぐ)が埋まっているそうです」
 「黒い百合? ちょっと前にネットの面白ニュースで見たなぁ」
 「ほな、鑑定書待ちの間、場所の特定しとこか」
 嵐山課長の指示で、鴨川と三千院が、ネットの情報を拾う。

 (くだん)の記事は、地元紙のニュースサイトですぐに見つかった。同じ新聞社の読者交流サイトには、読者から寄せられた写真が複数、投稿されている。
 短文投稿SNSでは、地域のトレンドワード上位十語に入っていた。
 写真のExifから、撮影場所を割り出す。GPS情報の座標をコピーし、地図上の地点を検索する。
 まずは、江田が居た古都大学を確認した。
 新聞に載った梶井氏宅には、飯田が居た。
 柴田が居た市立志賀越川小学校にもある。
 野次馬の老人が言っていた通りだ。あの時は、まさか関連があるとは思わず、聞き流してしまった。
 川端署管外の写真も、複数見つかった。

 管外の写真は、自分も白百合に黒インクを吸わせてみた、と言う実験写真がほとんどだった。
 実験写真と、屋外でもExif情報が削除されているものは、除外する。
 投稿写真には、贋物(にせもの)も混じっていた。
 三千院が見つけた写真は、帝都の植物園で撮影したものを、画像処理ソフトで加工してあった。一目でわかる雑コラで、すぐに除外した。

 他に古都市内では、マンションの敷地、民家の一部を改装したカフェの裏、川端信如(かわばたしんじょ)通り公園でも見つかっている。
 カフェとマンションは、プライバシー保護の為か、発見した全ての画像からGPS情報が削除されていた。どちらも本文には、「古都市内で見つけました」云々と明記してある。

 更に検索すると、カフェは、本文に店名を入れた投稿が見つかった。
 店名で検索し、住所を調べる。同名のカフェは、古都市内……川端署管内で一軒、天神府(てんじんふ)に三軒あった。
 川端署管内の住所で検索し、路上の詳細写真を探す。
 裏手の狭い路地に、投稿写真と同じ風景が見つかった。
 地図上の写真はやや古い為、百合はないが、ここで間違いない。

 同じマンションの敷地と思われる写真は、十一枚あった。
 本文にも物件名がない。写り込んだ車のナンバーも、全てモザイクや黒塗りの加工が施されていた。
 マンションの前には、駐輪場と三台分の駐車スペースがある。敷地をブロックで区切った植栽が囲んでいる。黒い百合は、その植栽に植えられていた。

 川端署の界隈は、古い民家が多い。高さなどの建築制限がある為、マンションは全部で七棟しかない。
 他の五地点の配置から、魔法陣の大きさは、川端署管内の約三分の一を占めている、と推測できる。
 マンションが、魔法陣のどの部位に相当するか不明だが、およその捜索範囲は、見当がついた。
 備東安美利(びとうあみり)出口芽衣(でぐちめい)普家絵冬(ふけえふゆ)の中身が、ここでみつかれば、確定だ。

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