■黒い白百合 (くろいしらゆり)-22.術者候補(2016年06月19日UP)
捜査本部に戻り、嵐山課長に報告する。
「生きて、ちゃんと体に戻れるんがわかっただけでも、
「サンちゃん、元に戻れた原因て、わからんの?」
嵐山課長が表情を和らげて
「何らかの原因で、術が解けたんでしょうね。犯人の用が済んで、自主的に解放したのか、何かアクシデントがあって、術が解けてしまったのかまでは、わかりませんけど……」
「アクシデントやろね」
嵐山課長が断定する。
「どうして、そう思われるんです?」
「なんでぇ、て、通りすがりの学生さんにひっついて、術で
課長の言葉で、三千院は改めて考えた。
巴が犯人でなければ、そうだろう。
犯人なら、わざわざ自分から、家族に連絡するだろうか。あの時点では、まだ、江田の失踪は、
巴が犯人だった場合は、どうだろう。
何らかのアクシデントで、江田の魂を利用できなくなった。江田を誰かに押しつける為に、「手っ取り早く無料で使える
古都大学は、川端署管内にある。
行方不明者がこの範囲に集中していると言うことは、この辺りに土地勘のある者の仕業と見て、ほぼ間違いはないだろう。
江田が覚えていないだけで、巴がコンビニや花屋へ、客として行った可能性は充分、考えられる。川端病院にも、患者か見舞いで訪れたかもしれない。飯田が勤める
巴は、行方不明者全員と、接点を持つことができる。
本人は魔力がないと言っているが、少なくとも霊視力はある。
家族が魔力を持っているなら、無料で水晶に魔力を補充させることも可能だ。
弟や親戚が持つ文献で、術の知識も得られるだろう。
動機は不明だが、巴には術の行使……犯行を可能にする条件が、当て嵌まり過ぎる。
「サンちゃん、難しい顔して、どなしたんや?」
「巴さんって、実行できる条件が、全部揃っちゃってるな、と思って……鴨川さんは、どう思います?」
鴨川に聞かれ、三千院は推測を詳細に語った。
「わざわざそれを、自分からベラベラ警察に喋るて、犯人やったとしたら、古都大生の割にアタマ弱ない?」
「動機もわからへんし。そもそも、その術は、何するもんなん? 使えるだけやったら、家に包丁ある人ら、みんな殺人鬼候補やで」
鴨川が、自分のこめかみを指差し、嵐山課長は首を傾げた。
「かく言う自分も、条件には当て嵌まるんですけど、犯人なのかって言うと……うーん……術については、明日、伏見教授が戻られるんで、調査を伝言してあります。万一、断られても、蒼い薔薇の森にも頼んでありますので、時間は掛かりますが、わかると思います」
「何の術かわかったら、動機もわかるやろからね。ほな明日、センセによぉ頼んでな」