■汚屋敷の兄妹-汚屋敷の兄妹 52.掃除のコツ(2015年11月28日UP)

 お話の中に登場した汚屋敷生成の原因と、掃除のコツを抜き出した。【51.原因】【52.コツ】
 どの記述が何話に登場するか、読み返してみると、新たな発見があるかも知れない。
 「※」は本文中にはない注釈。

 ☆物を減らすと楽になる
 【余計な物は置かない】
 自分の部屋には、最低限の物しか、置いていない。

 押入れはあるけど、布団を片付ける以外、何もない。

 (※廊下の)床だけは、物を置かないようにしている。

 腐った食材とか、汚いものがあるから、家が汚れる。
 まず、それを捨てなきゃ掃除できない。
 放置してるから、鼠や害虫が寄ってきて、家が荒らされるんだ。

 まず、壊れている物を全て捨てた。それから、同じ種類の物を集める。
 工具は、同じ物が幾つも出て来た。錆びたり曲がったりしてるのは、捨てた。それでも複数残る。
 どうせ、見当たらなくて買った方が早いと思ったんだろう。
 一番新しそうな物だけ一個ずつ残し、他は全て捨てた。

 【毎日、掃除すると埃が溜まらなくて作業が楽】
 毎日、掃除して換気して、ここだけ別の家みたい。

 【こまめに捨てる/(自治体によっては)直接搬入も可】
 ゴミは処理場に直接持ち込めるげな。

 【清潔な状態を確認する】
 ビジネスホテルは、建物は古いけど、掃除が行き届いていて、シーツも清潔だった。清々しい気持ちで返信する。

 キレイなお風呂に入って、清潔なお布団で休ませて貰った。

 「普通にキレイな所」から帰ると、自分ちの汚さを改めて思い知らされる。

 ☆いきなり完璧を目指さない
 少ししか作業できないけど、何もしないよりはマシ。
 たったひとつでもいい。ゴミを捨てたい。

 永遠に片付かないなんて事はない。
 どんなにゴミが山積みでも、ひとつずつ捨てていけば、いつか必ず片付く。
 希望が、私にヤル気と力を与えてくれた。

 お風呂はいつも私が最後だから、掃除をしてから体を洗っている。

 水を流す部分だけは、私がちょくちょく磨いているから、まぁまぁキレイ。

 ゴミ層の下で、埃や何かが腐汁と湿気で固まって、上をそのまま歩くから圧着されて、何十年も掛けて廊下の床は、地層化していた。
 (※操水の魔法が使えない場合は)これをメラミンスポンジとかで地道に削る

 ☆着手しやすい場所から取り敢えず始める
 「さて、どっから手ぇつけるかな……?」
 「トイレとお風呂。重要度が高くて狭くて物が少ないから、早く片付くし、キレイになったらヤル気も出るよ」

 ☆通路を先に片付けると作業しやすくなる
 「ケンちゃん、戸を外して、玄関の物、全部出そう。まずは動線の確保だ」

 ☆優先順位を決める
 ツネ兄ちゃんが掃除の段取りを説明してくれた。
 「状態があれだから、先に中の物を全部出そう。一カ所ずつ集中して、空にしてから掃除。最低限の所なら、トイレ、お風呂、台所、お祖母ちゃんの部屋の順番で。他は余力があればやろう」
 居間の隣の部屋は後回し。先にお祖父ちゃんお祖母ちゃんの部屋を片付ける。

 ☆ゴミの日の予定に合わせ、捨てやすい物から一種類ずつ捨てる
 とにかく、スペースを空ける為にひたすら、ゴミ袋に空ボトルを詰めた。多分、全部プラ容器だ。

 ☆放置系掃除で楽してキレイに(使用の可否は要確認/換気はしっかり)
 トイレの水洗タンクと、便器内にクエン酸を入れて一晩放置。
 これだけで、クエン酸水溶液と接していた部分が、びっくりするくらいキレイになった。
 その分、他の部分の汚れが際立ったけど、何もしないより、ずっとよかった。
 年単位でこびり付いていた黒ずみや尿石が、少しでも消えた事は大きい。

 「洗剤を染み込ませたトイレットペーパーとかを汚れに貼り付けるの。湿布みたいに」
 まずは男性用小便器。マスク越しでも臭いがキツイ。
 洗剤を万遍なくスプレーして、トイレットペーパーを貼り付けて、またスプレー。
 ボトル一本分使い切って、トリガーを握り続けた腕がパンパンになった。

 洗面器に(※塩素系。混ぜるなキケン)漂白剤を注ぐ。目にしみた。窓を全開にする。
 雑巾同然のボロタオルを雑巾として活用する。
 漂白剤の原液に漬けて、絞らずに壁に貼り付ける。最後に床にも貼り付ける。
 天井はどうしようもないから、また別の方法を考えないと。

 ☆在庫品を使い切る
 洗剤は売る程あるから、惜しみなく使った。
 中身が入ったままの使いさしも多い。
 使いかけのボトルを何本も発掘したから、使い切ってやった。

 今回は、クリーンセンターに直接搬入するから、この黒ゴミ袋を全部使い切るつもり。

 ☆年単位で使わないものは未使用でも捨てる
 古歯ブラシの茶筒は、掃除用にひとつだけ残して、後は全部ゴミ袋へ
 化粧品のサンプルも、どうせ使わないから全部捨てた。

 ひょっとして、全部要らないんじゃない?
 何年も開けなくても、特に困らなかった。
 ずっと使わなくて平気なら、無いも同然。

 大事にしないって事は、別に要らないんでしょ。

 アルバムと通帳と印鑑と貯金箱の他は全部捨てた。
 母さんはとっくに、ここでの暮らしを捨てている。全部、要らない物なんだ。

 ☆要・不要の判断につかれたら保留して休む
 ここのは全部中身が入ってるみたい。保留。
 上の棚も、手が届かないから、保留。
 過剰在庫の段ボール壁も保留。

 ☆下手の考え休むに似たり、とにかく動く
 早く終わらせる為に、どんどん手を動かして、ゴミ袋を外に出す。

 足元に散らばる明らかなゴミは、スコップでゴミ袋へ。
 心が折れそうになったけど、とにかくひたすら、外に運んだ。
 心を無にして、物を出す。

 部屋を埋め尽くすゴミをスコップで一気に、袋詰めする。

 ☆人海戦術
 ※魔法使いは無理なので、普通の他人に手伝ってもらうと捗る。
 「私と三枝(さえぐさ)も魔法使いです。庭の不用品はどれですか? 除雪のついでに移動させます」
 マスク、ゴム手袋を装備(※人数分の装備品の用意をお忘れなく)
 俺、真穂、ツネ兄ちゃん、クロエさんが、ゴミ袋を手にして横一列に並ぶ。

 絶望的に思えた玄関も、四人掛かりなら、あっという間だった。
 流石にこれだけ人数が居ると、ガンガン進む。

 大掃除の人手は十人、内三人が魔法使い、一人は人外。
 俺と真穂二人だけで頑張ろうなんて、無謀だった事を思い知らされた。汚屋敷レベルが高過ぎる。
 魔法使いが洗剤で無双して、超火力で焼き払わなきゃ、どうにもならない。
 もし、プロを雇ってたら、人海戦術で、業務用洗剤&高圧洗浄機&スチームモップ無双、クリーンセンターに搬入しまくりってとこか。
 親戚で元手がタダの魔法でも、プロ並みのお礼しなきゃ、申し訳なくてヤベェ……

 ☆不用品を捨てる決心と他人に委ねる決断をする
 「不用品……ゴメンナサイ。物干し台以外、全部ゴミでゴメンナサイ」
 「箱か袋に入れて全て出し、必要な物だけ戻しましょう。クロエ、こちらのお二人に指示された物を運びなさい」

 「クロエさん、次は傘立ての傘。全部捨てます。ゴミを焼いた場所に運んで下さい」 
 「ケンちゃん、いいのか?」
 「全部捨てて、一人一本ずつ新品買った方が早いです。確認する時間が勿体ないんで」

 現金以外の物は要らん。
 どうせ中身は全部朽ちてる。何も見ないで捨てよう。

 「普段着てる服は気に入ってると思うから、それだけ残して後は全部捨てて下さい」
 「箪笥に重要書類仕舞ってたりするから、一段ずつチェックしてから捨てような!」
 祖父母ルームの物で残ったのは、通帳とかの貴重品といつもの服、アルバム、古ぼけた金庫だけだった。

 ☆整理整頓は、仕事の基本
 どっかの工場が3S……整理、整頓、清掃を徹底して、スゲー業績伸ばして、ニュースにもなってた。
 整理整頓は、仕事の基本なんだ。
 普通に生活してればわかるし、どこでもやってることだ。

 ☆中身を把握できる状態で整理/分類
 ガレージに入れていた箱を運び、設置したスチールラックに置く。
 中身を出して、種類毎に透明のケースに収める。
 「どこに何が幾つあるか」一目で在庫が把握できる配置にした。
 ケースに入ってれば、鼠とかに荒らされずに済むだろう。多分。

 工具を工具箱に納め、未開封の肥料と農薬、手作業用の農具、籠を種類毎に分けて、棚に収納する。
 「倉庫って、こんな……広かったんだ」

 ☆相手の意向を確認してから、寄付やリサイクル
 「これ、こんなにあってどうすんの? 双羽さんに箱、洗ってもらって、リサイクルショップに売った方がよくない?」
 中はキレイな新品をそのまま捨てるのは、気が引けてた。でも、置いてても使い切れる訳ないから、どうしようかって、ちょっと悩んでた。
 「ネットオークションは時間掛かるからやめとこうな」

 DVDと切手と商品券は、マー君の提案で売る事になった。

 捨てるのがアレなら、施設とかに聞いてみたらって、近くの老人ホームと児童養護施設と自立支援施設を調べてくれた。
 お兄ちゃんと叔父さんが手分けして問い合わせて、欲しいって言ってくれた所に寄付してきた。

 「箱が傷んでても中身がキレイなら、ペットNPOが洗剤とかタオルとか、引き取ってくれるらしいよ」
 過剰包装を開封するだけでも、結構な作業量だ。その後、大量のゴミになる。NPO大迷惑だ。

 ☆余力があれば、壁や天井も掃除する
 ※意外と汚れていて、そこから降ってくる埃で床が汚れると言う……
 双羽(ふたば)さんが、廊下の天井掃除を再開する。水の濁りがハンパない。
 この家の天井は、ひょっとして、建ててから一度も掃除してないんじゃないのか?
 ヤニと煤と油煙と埃で真っ黒だったのが、一気に明るくなった。

 ☆防災面を考慮する
 ※「上に物があると地震で落ちて危ない」
 ※「通りにくいと救助が遅れて助けられない」
 ※「脚立に乗って取る時に転倒すると大怪我する」
 ※「汚い/要らない/使わない」を理由にすると「勿体ない」と反発する人でも、防災面を強調すると、捨てる方向性に向かいやすい。
 ※老人が固執しているゴミは、すぐに捨てず、「安全な場所に置こう」と通路以外の場所に仮置きし、忘れた頃に廃棄する。

 ☆嘘でもいいので「必要だから」と持ち出し、ゴミ捨てに反対する人がいない場所で捨てる。
 古新聞、古雑誌は束ねて、学校のリサイクル箱に持って行く。「学校で要るから」と言えば、流石に反対されなかった。

 ☆ゴミ捨ての強行は縁切り覚悟で
 ※本作では、ゴミ捨て反対者の留守中に親戚総出で大掃除を強行したが、その後、縁も切っている。
 ※関係を継続する場合は、非推奨。役所など第三者に介入を依頼し、家族は手を引く方がいいかも知れない。

 「この状態をおかしいと思わない時点で、何かしら精神的な問題を抱えてると思うよ。普通の人はゴミに埋もれて生活してないし、虫の死骸や腐敗した物を部屋の中に放置したりもしないんだよ」
 ジジイと祖母ちゃんはそれを隠す為に、オヤジはナチュラルに、物を溜めて部屋を塞いで、現実から目を逸らしてるんだ。
 物で隙間を埋めて部屋を塞いでも、犯した罪が消えてなくなったりはしない。
 ゴミ同然の奴らなんて、恨む価値もなかったんだ。どうせ、家ごと捨てるなら、今までの恨みも一緒に捨てる。

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