■汚屋敷の兄妹-真穂の12月25日〜12月26日 22.人手(2015年08月16日UP)
「お、頑張ってるなぁ。五万とガソリン代実費で、期間中の運転手。日当五万追加で、大掃除の手伝いしたげるけど、どう?」
マー君と米治叔父さんが来てくれた。マー君は叔父さんの軽トラから、超笑顔で降りて来た。叔父さんは、苦笑いしながら運転席から降りた。
高いのか安いのかわからないけど、人手は多い程助かる。お兄ちゃんと相談して、発掘したお金を数えた。玄関、廊下、台所で合計二十三万円ちょっとあった。これでお願いしたら、快く引き受けてくれた。
他のみんなにもお礼しないと。こんな特殊清掃、タダ働きなんてさせられない。
「これ、こんなにあってどうすんの? 双羽さんに箱、洗ってもらって、リサイクルショップに売った方がよくない?」
目から鱗。その発想はなかった。
中はキレイな新品をそのまま捨てるのは、気が引けてた。でも、置いてても使い切れる訳ないから、どうしようかって、ちょっと悩んでた。マー君凄い。
「ネットオークションは時間掛かるからやめとこうな」
「近くのお店、検索してくる!」
私は部屋に戻って、ノートパソコンを起ち上げた。隣の矢田山市内のリサイクルショップが一番近い。ネット査定もしてる。庭に出て、在庫の山の品名と数をメモして、メールを送った。
庭に戻ったら、叔父さんとマー君が灰の袋を軽トラに積んでいた。
双羽さんに箱の洗浄をお願いして、私はガレージの物出しに取り掛かった。取敢えず、ここが一番、物が少ない。後で家に戻す物の仮置き場にする。
マー君、クロエさんも手伝ってくれて、すぐに空っぽになった。双羽さんが、排ガスと埃でドロドロのガレージをキレイさっぱり、洗い流してくれた。
私と藍ちゃんは、庭に出した物の選別に入った。売る物、捨てる物、残す物を仕分けする。お兄ちゃん、叔父さん、ツネ兄ちゃん、マー君、クロエさんは、台所の物出しの続き。双羽さんは洗浄。
手分けして、それぞれの作業をガンガン進める。
「オヤジ達、こんなもんまで取っとるが……」
米治叔父さんは、呆れながら物出しをしてくれた。ゴミしかなくて、ゴメンナサイ。
私と藍ちゃんは、時々相談する以外は無駄口を叩かず、ひたすら選別。どんどんゴミの山が大きくなる。
お祖父ちゃんは、欠けたり割れたりした食器も、「金継ぎすりゃ使える」って捨てさせてくれない。でも、職人さんには一度も持って行った事がない。
何でも、そう。
捨てたら勿体ないって怒るだけ。
手入れしないし、使いもしない。
不用品は場所を塞いで汚いだけ。
どう勿体ないのか理解できない。
お祖父ちゃんが「勿体ない」って言う物は、何も残したくない。
「真穂、査定の結果、来てないか見てくれるか?」
「あ、う、うん」
集中し過ぎて、お兄ちゃんに言われるまで全然気づかなかった。いつの間にか、ノリ兄ちゃんと三枝さんも来ていた。叔父さんとお兄ちゃんとマー君が、ウチの軽トラとマー君の車に売る物を積んでいる。
結果と地図をプリントして、お兄ちゃんに渡した。叔父さんが地図を覗く。
「この辺、道が入り組んどるげ、先導するが」
車三台が、灰と過剰在庫を積んで出発した。私と藍ちゃんは、ちょっとだけ手を振って見送って、すぐ作業に戻った。
冬の日は短い。一瞬でも惜しかった。