■薄紅の花 04.河口の街-20.用心棒達 (2016年01月03日UP)
「それでは、確かに。良いお年をお迎え下さい」
昼過ぎ、約束通り、使者が薬を受け取りに来た。一覧と照らし合わせ、確認が済むと、優しい笑みを残して店を出た。双魚は、使者の笑顔を初めて目にした。驚いて何も言えないまま、後ろ姿を見送る。
「えれぇ御大尽だな。あんなに買って、家族みんな伏せってんのか?」
次男の白鮫が小声で聞く。双魚は首を横に振った。
「いえ、あの人はお医者さんのお使いで、病院で使うんです」
「へぇ〜……やっぱあんた凄ぇや……」
三人揃って感心する。手放しに誉められた双魚は、何と返事をして良いかわからず、俯いた。耳まで真っ赤になる。兄弟は、そんな双魚にも、尊敬の眼差しを注ぎ続けた。
夕食時、三人は双魚の魔法を語った。老いた両親が苦笑する。
「お前ら、子供みたいにはしゃぎやがって。女房子供の居るおっさんにゃ見えねぇぞ」
「あれっ? 冬至……ご家族と過ごさないんですか?」
思わず疑問が口をついて出た。三人は途端に渋面を作った。
「それぞれ、別の港で所帯持ってんだ」
「夏至祭は、女房子供と一緒だよ」
「船長がケチでな。身内でも正規料金でなきゃ、乗せてくれねぇんだよ」
最後は、ここに居ない船長を憚り、声が小さくなった。
「俺らも結婚式にしか会ったことがないんだ。そうそう仕事も店も休めんからな」
「孫に会えないのは淋しいけど、みんな元気でいるそうだから……」
猫島夫婦は、弱い笑みを浮かべた。
あぁ、そうか……誰かにどこかへ連れて行ってもらうのに、魔法が使えなきゃ、その都度、往復の対価と時間が掛かるのか……
また改めて、魔法を使えない不便を思う。
話しは何てことのない世間話に移り、話題が二転、三転する内に魔道士狩りの話になり、そこから材料集めの話になった。
「そんな訳だからよ、双魚さんが河へ行く時、付き添ってやっちゃうれねぇか? 小遣いやるからよ」
父の申し出に、兄弟は額を寄せ合った。双魚は口を挟まず、成り行きを見守る。すぐに話がまとまり、長男の縞鯱が答えた。
「一人で行くのは、用心棒としちゃ心許ない。相手は何人も居たんだろ? 二人で交替して付く。三人とも出掛けちまったら、お袋が淋しがるからな」
「もうッ、やだよ、この子ったら」
おかみさんは笑ったが、その顔は嬉しそうだ。