野茨の環シリーズ用語解説(2016年02月07日追加)

魔物

  • 【三界の魔物(さんかいのまもの)】
  •  存在の核を物質界と幽界、冥界の三つの世界に置く魔物の総称。
     数千年前、アルトン・ガザ大陸の大国で生み出された魔法生物の一種。
     魔道士に対抗する為に作られた生物兵器。

     瘴気を撒き散らし、人々の暗い情念と瘴気で増殖し、魔力を持つ者を喰らい、成長し続ける。
     存在の位相をずらして姿を隠し、攻撃を躱す。核を破壊しない限り、周辺の魔力を糧に膨張しつつ再生する。

     通常の武器では、物質界の肉体を破壊するに留まる。
     魔法や魔法の武器ならば、幽界までは届くが、冥界には届かない。
     三つの世界に同時に届く武器。「一人の全存在」を変換した【退魔の魂】と呼ばれる武器だけが、これに対抗し得る。

     【三界の魔物】は、戦場で爆発的にその数を増し、やがて軍の制御を離れ、人の手を離れ、作成時に与えられた本能に従い、破壊と増殖を繰り返した。

     人間同士は停戦し、【三界の魔物】に対抗すべく各国が協力し合った。
     先に三界の魔物に蹂躙されたアルトン・ガザ大陸からは魔力が枯渇し、皮肉にも【三界の魔物】の弱体化をもたらしていた。

     退魔の魂が開発され、多くの人間が自ら武器となり、【三界の魔物】への反撃が始まった。
     1000年以上の長きにわたる戦いの末、最初に作りだされた最も大きく強力な【三界の魔物】をチヌカルクル・ノチウ大陸西部、ラキュス湖の北方に封じた。
     ムルティフローラ王国は、その封印の維持の為に建国された。

     【三界の魔物】が発する瘴気が凝ると、新たな【三界の魔物】が生じる。
     結界では、瘴気を封じることができない為、現在でもムルティフローラ国内のあちこちで発生する。
     発生直後の【三界の魔物】は虚弱だが、並の人間の眼では捉えられない。
     この世界の穢れや生物、魔力を持つ者を喰らい、力を付けると、通常の霊視力でも視えるようになる。
     それを放置し、より力を付けさせると、肉眼でも見えるようになるが、並の戦士では太刀打ちできなくなる。

     生きた人間が、生きながらにして【三界の魔物】と化す場合もある。
     憎しみ、恨み、妬み、嫉み、過度の欲望、強過ぎる執着……負の感情と瘴気が凝ると、新たな三界の魔物が生まれる。
     過度の欲望に呑まれて、歪んだ心。
     歪んだ心が穢れを生んで、その膿んだ魂が、【三界の魔物】の瘴気に触れた……成れの果。

     ムルティフローラ城の地下深くから、滲み出す瘴気。
     三界の眼でなければ視えない。【三界の魔物】の出す魂の毒。
     毎年、大晦日にムルティフローラでは、国を挙げて穢れを祓う。
     瘴気のかけらから、新たな三界の魔物を生まないように……

  • 【雑妖(ざつよう)】
  •  ぐにょぐにょと捉えどころがなく、形も定かでない。
     虫や動植物に似た部分もあるが、この世の何にも似ていない部分の方が多い。
     何匹いるのか、個体の境さえはっきりしない。
     それどころか、これに個々の意思や知性があるのかすら不明だ。
     ただ、そこにいるだけなのか、それとも、何かをしているのか。
     雑妖はどこにでも発生するありふれた存在だが、その目的や行動原理は、謎に包まれていた。

     わかっていることは、この世の穢れや陰の気などから生じ、穢れを食って育つこと。
     穢れを生じさせる性質の人間と親和性があり、雑妖が雑妖を呼び増殖すること。
     個々の力は弱く、ちょっとした不運を呼び寄せるに過ぎないこと。
     定まった形を持たず、能力などの個体差が大きいこと。
     日の光を浴びただけでも消える儚い存在だと言うこと。

  • 【魔物と魔獣】
  •  魔物は、何かの弾みで幽界から物質界に迷い込んだ異界の生物だ。
     出現当初は存在が希薄で、霊視力がなければ視えない。
     物質的な身体を持たない魔物は、霊視力のない者には視えない。
     日のある内は薮や叢に潜み、穢れと魔力を喰らって際限なく育つ。
     物質界の生物を捕食することで、この世での存在を確かなものにし、肉体を手に入れ実体化する。

     完全に実体化し、肉体が完成した魔物を魔獣と呼ぶ。
     本格的にこの世に居着いて、繁殖する。
     肉体を備え、この世に定着した魔獣には、日中に活動する種もある。
     魔力を持つ生き物を喰らえば、その肉体はより大きく強くなり、際限なく育つ。

     魔力を持つものを食べると、その分、肉体が大きくなり、この世での寿命が延びる。
     魔獣は身体が大きい程、強く、長く生きる。
     魔物も魔獣も、体が大きいモノは、強い。
     身体の大きさと寿命には、普通の動物のような種としての上限はない。

     魔物は、魔法か魔力を帯びた武器でなければ、倒せない。
     魔獣は、その強さ故、魔法がなければ太刀打ちできない。

     普通の魔物も【三界の魔物】も「体」の層が厚い程、物質界への影響力が大きく、力も強い。
     この世に定着した魔獣から生まれた魔獣は生来、肉体を具(そな)えているが、異界から来て魔物から成(な)った魔獣より小さく、弱い。

     また、跳び縞のように草食で、特に害のない魔獣も存在する。

  • 【使い魔】
  •  使い魔は、魔法使いが使役する小動物などのこと。
     絵本などでは、魔女と黒猫が一緒に登場することが多い。あの黒猫が典型的な使い魔。

     小動物などを使い魔として使役するには、魔法の主従契約が必要。
     術者=主人が自力で術を掛ける場合と、魔法の道具で一時的に支配する場合がある。
     自力で掛ける術には、複数の種類がある。
     契約期間は、魔物や魔法生物が相手の場合は、主(あるじ)、若(も)しくは、使い魔が死亡するまでとする場合が多い。
     道具を使用した場合は、その効力が失われるか、道具を手放すと契約が解除される。

     基本的に、術者=主人よりも、使い魔=下僕の力は弱い。
     例外的に、特別契約を結ぶことによって、術者よりも強い魔物を使役する場合もある。契約終了後、術者の魂を提供するなどの所謂(いわゆる)、悪魔の契約。
     主(あるじ)となった魔法使いは、使い魔の視聴覚を利用できる。主(あるじ)は、任意に感覚を切り替え、使い魔が見聞きしたことをそのまま、知覚できる。

     それなりに力のある魔法使いは、付近を漂う雑多な妖魔や小さな魔物、猫や鴉などの小動物を一時的に支配し、使役することもできる。
     手紙の運搬などの簡単なお使いや、偵察などが主な用途。
     一時的な使役と、契約した使い魔では、下僕の支配に使用する術や必要な魔力が異なる。

     使い魔には色々種類があるが、基本的に生き物。
     魔物、動物、魔法生物のいずれも、心と自分の意思は、持っている。
     使い魔の意に沿わないことでも、魔法の契約による強制で、使い魔の意思に反して実行させることができる。

     使い魔の例
     小動物=「虚ろな器」で、〈水柱(みはしら)〉が使役する〈玄太〉。術で普通の鴉(カラス)を使役している。餌や世話が必要で、基本的に外飼い。能力は普通の鴉と同じ。
     小さな魔物=「虚ろな器」で、〈三日月〉が使役する〈梅路〉。幽界から呼び出し、三毛猫の形にしている。蝙蝠の羽を生やした赤猫の魔物。魔力を与えるだけでいいので、世話が楽。
     魔獣=「飛翔する燕」で、カボチャ泥棒の老人が使役していた【跳び縞】。おとなしい草食の魔獣。支配の術の効果時間は半日程度なので、毎日、掛け直す必要がある。
     魔法生物=「野茨の血族」などで、巴宗教(ともえむねのり)が使役するクロ(黒江/クロエ)。魔力だけで維持できるが、おやつやご褒美として、ちくわを与えて猫かわいがりしている。

     支配に必要な魔力の量は、以下の通り。
     魔法生物>>>(中略)>>>魔物>>>>>小さな魔物>小動物>>>>雑妖
     弱い者ほど、支配に必要な魔力の量は少なくて済む。
     魔法生物は、支配の他、そのものの維持にも魔力が必要。

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